空想の代表的存在が「恋」。
恋の大部分は空想と言ってもいいすぎではないかもしれません。
たとえ恋する相手が目の前に居たとしても、その所作や言葉の意味を人はたえず嚥下し反芻します。
ましてや届かぬ恋や逢瀬のかなわぬ恋は、空想の中に抱き込まれているようなもの。
小川さんは空想と回想を実にみごとに結晶させて作品を書く事の出来るまれな方だと思います。
この「薬指の標本」の危うい世界観。
それを品性を保って描く才能は天与のもの。
小川さんの品格そのものの現れなのだと思います。
空想書店10月出品。(by Umi)